2006年05月10日

春祭りの神社

~老いも若きもみんなが笑顔

空高く、そびえる旗のてっぺんに祀られたサカキが天を目指して春風に揺れている。朝六時半、氏子になっている家の男衆の手によって、参道の入り口に二本の大きな旗が立てられる。春祭りは、早朝の旗立てとともに始まった。

昼すぎに、夫や友人たちと連れだって神社に向かう。風になびく旗に迎えられ、小さな鳥居をくぐって石段をのぼると、古びた物置小屋を思わせるような社がひっそりと佇んでいる。手を合わせると、太鼓の音が流れてきた。下の広場では、当番の人たちが前日にとんてんかんてんとこしらえた手作りの舞台の上で和太鼓が鳴り響き、カラオケののど自慢があり、愛好会による踊りなどが披露される。

夫はずいぶん前から近所の友人と一緒にカラオケ大会に参加し、アイドル歌手のまねをするときもあれば、マツケンサンバを踊って見物客を笑わせたりしている。

私はといえば、お祭りに行くようになったのはここ数年のことだ。ひなびた神社、出店はたったの一軒、まばらな見物客のほとんどが年配の人とあっては、足が遠のいてしまう。ある時、お世話になっている自治会のおじさまに、「祭りの時ぐらいは神社に出向いてお参りし、きちんとお神酒を飲め。この土地を守ってくれている神さまだぞ」と教えられてから、顔を出すようになった。

紅白の垂れ幕を張った手作りの舞台の上には、「奉納」と書かれた額が飾られている。神仏を楽しませ鎮めるために、供物を供えたり、その前で芸能・競技などを演じることだそうだ。空の高みに吸い込まれていく力強い太鼓の音に、神さまが耳を澄ませているような気がする。お世辞にもうまいとはいえない夫の歌はさてどうだろうと苦笑いがこぼれた。見知ったおじさまが、湯飲みをぐいと押しつけてきては「ほら、もっと飲め、飲め」と愉快そうに酒をつぐ。

あちらのおじさまも私を見つけて手をふってくる。老いも若きもみんなが笑顔で元気な姿を見せに来る、それが神さまをよろこばせることにちがいないなと思えて、私も笑顔になる。そして、今年もこうして元気で健やかに祭りを迎えられたことに感謝をする。


(東京新聞埼玉版・2006年5月10日掲載)

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