2005年10月05日

地区対抗大運動会

~参加してわかった付き合いの大切さ

 十月は、年に一度の「地区対抗大運動会」がある。近隣住民とのつながりを重んじるこの地域では、五つの地区が集う大規模な運動会は、お祭りや掃除当番と同様に参加必須の行事である。

 都会の生活では自治会の活動にも縁がなかったから、十年前、ここに引っ越して来た時に、隣近所との付き合いの濃さに少なからず驚いた。地域の最小単位である「となり組」という集まりも初めて耳にするものだった。何がなにやらわからぬまま、神社の草むしりに出かけ、自治会の集会に顔を出し、下A組と書かれた回覧板を次の家に持って行った。

 私の知らない世界は、秋の運動会で一気に明らかになった。忘れもしない、初めての運動会で、地域の階層構造を理解したのだ。対抗する五つの地区はハチマキで色分けされ、地区名の書かれた白いテントを作戦本部として闘う。テントで渡されたゼッケンを手に、私は混乱した。たったひと文字「東」とある。アズマ、とは何だろう。よく見ると、自治会で見知ったおじさんたちはみんなアズマのゼッケンだ。しかし、わが「井上」地区のテントには「西」や「中峰」の人もいる。そうか、わかってきたぞ。私が所属している自治会は、東(ヒガシ)組だったのだ。つまり、埼玉県>○○市>△△地域>井上>東組>下A組>私、という階層なのだ。そしてこれは、△△地域にある五つの地区が集う大運動会。

 グラウンドに立ってぐるりと見回す。ハチマキの色でどこの地区の人かがわかる。背中には自治会の名前が入ったゼッケン。読み方に迷うような難しい漢字もある。みんな、それぞれどこかしらに属し、ゼッケンのそのまた下には「となり組」がある。あの人も、あの人も、忙しくお当番に精を出し、となり組で助け合っている。栄えあるこの大イベントに、私は「引っ越しリレー」の選手として登録されている。秩父きゅうり、などと書かれたままの段ボール箱を手に走る。次の走者に荷物を託し、「いけーっ、がんばれーっ」と遠ざかる「東」のゼッケンに向けて声を張り上げる。


(東京新聞埼玉版・2005年10月5日掲載)

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