2003年10月22日

大家族主義って?

少子化問題や年金制度のあり方を取り上げたテレビ番組で、「大家族主義に戻りましょう」とにこやかにコメントする男性がいた。学者風の解説者がこの手の発言をするたびに、何を寝ぼけたことを言っているんだ、と腹立たしくなる。 

親子三世代が同居すれば少子化や年金破綻も解決できる、と言いたいらしい。仕事をする女性が子どもを産みにくいのであれば、子育ては舅や姑の手を借りればよい。年老いた親は子どもや孫が扶養し、世話をする。家族の原点にもどろう、というところか。

家族崩壊や少年犯罪が懸念される今日に家族愛を唱えるのは聞こえはいいが、それはただの責任転嫁にすぎないように思う。社会保障や福祉を考える側が手に負えなくなったことを、家族に押しつけているだけではないのか。

今や、女性が仕事をするのはごく自然のことになっている。子どもを産む、産まないはそれぞれの事情や選択によるが、仕事を続けたまま家庭も持ち、子どもも育てたいと願う人が大多数である。それを支えるのは夫と年老いた親だけという社会では、少子化を止めるのは難しいだろう。保育施設を増やせば子どもを産むようになる、といった極論を言っているのではない。現実の問題として、埼玉県では保育施設への入園を待っている子どもが二千人を超えている。少子化への対応策のひとつとしていま求められているのは、働く女性を支援する福祉体制を充実させることである。

きらびやかなビルが建ち並び、道路には新車が行き交い、店には物があふれている。豊かな国に暮らしていると思ったが、老後の生活は責任を持てないかもしれないと言う。この国の年金制度は崩壊寸前なのだそうだ。どれほど経済が向上したとしても、老後の社会保障さえも整えられない国なんてちっとも豊かではない。

家族で助け合うのは当然だが、なにもかもその中で解決せよというのなら、政治の存在意義はどこにあるのだろう。


(東京新聞・2003年10月22日掲載)

by ichiko : カテゴリー:新聞掲載コラム

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