2003年05月28日

がんばれファミリーパパ

新緑のまぶしい季節である。山に囲まれたわが家の周辺は、いよいよ本格的な観光シーズンに突入し、休日の国道は観光客の車で埋まる。秩父へ向かう車線が渋滞していたかと思えば、3時間後には都内などに戻る反対車線がぴたりと止まって動かない。

隣町にキャンプや水遊びで知られる有名な河原がある。たまたま休日に通りかかり、橋の上から見える光景に目を見張った。広い河原は地面が見えないほどにテントと人、人、人であふれかえっている。水のそばまで車を乗り入れられる所は一分の隙もなく車が並び、狭い河原に広げたテントは隣の家族とぶつかりそうだ。ひしめきあうような中でのアウトドアレジャーでも、十分に楽しいのだろう。水しぶきをあげて遊んでいる子どもたちの顔を見ればよくわかる。はしゃいでいる子どもをよそに、ひとりシートの上で寝入っているパパの姿があった。

ビールでも飲んでうとうと、という感じではない。全身の力が抜けたように体を投げ出して、精魂つき果てた様子で深い眠りに落ちている。早朝から車に道具を積み込み、家族を乗せてやってきたのだろう。テントを張り、炭に火をおこし、バーベキューを焼く。数時間もしたらテントをたたみ、渋滞を通り抜けながら家に帰るのだ。家族サービスに励むファミリーパパの持つパワーにはいつも感心してしまう。

私がパパだったら休日は家でゆっくりしたいと思うだろう。ソファでごろごろ寝転がってテレビでも見ていたい。月曜日からはまた通勤が始まるのである。

行楽帰りの渋滞で、前の車に子どもの姿が見えた。遊び足りないのか、後ろの座席ではねまわっている。ここから渋滞していると、都内や県南地域の家に着くのは何時になるのだろう。

ふと河原で見た、どこか哀愁を感じさせる疲れた寝姿が頭をよぎった。事故などおこさぬように気をつけて、がんばれファミリーパパ、家路は遠い。


(東京新聞・2003年5月28日掲載)

by ichiko : カテゴリー:新聞掲載コラム

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