2002年05月28日

待望のコンビニ、それが連れてきたもの

多くの人が楽しみに待っていた。近所の友人は「早く開店しないかなあ」と会うたびに顔をほころばせていた。

三年前の春、田舎の山奥にコンビニが開店したとき、近隣住民は少なからず興奮した。この辺りでは、食料品を買える店は一番近い所でも五キロ先のスーパーである。近所の個人商店には、牛乳や食パンなどは置いてないのだ。

そんな食料僻地(へきち)にコンビニがやってきた。牛乳や食パンはもちろん、お弁当もある。雑誌や新聞も買える。しかも二十四時間営業なのだ。

お店はいろいろな人の憩いの場になった。巨大な駐車場を備えているので、平日の昼には何台もの大型トラックが休んでいる。週末には、家族連れの観光客がドライブの途中に立ち寄る。

真夜中に通ると、ほっとした。深い闇の中に、こうこうと明かりをつけたお店が見える。家まであともう少しだ。けれど、いつしか夜にはその店の近くを通るのがとても恐ろしくなった。

巨大駐車場は、暴走族のたまり場になっていた。派手なペイントや改造を施した車が何十台と集まり、若者たちが地べたに座っている。週末の夜は、お店をスタート地点に国道がレース場になる。エンジンの爆音やタイヤをきしませる音は明け方まで続き、国道から離れた我が家の中まで響いてくる。

ごう音はまだ我慢できるが、国道で彼らと出会ったときの恐怖は耐え難いものがある。今までに何度か無謀な運転の末の事故を見た。カーブを曲がり切れず電柱に激突して横転した車や、民家の垣根に突っ込んだもの。対向車を巻き込んだ衝突事故には、背筋が寒くなった。

国道を利用する住民には、彼らの暴走は恐怖だ。命知らずの若者が、いつ飛び込んでくるかわからないのである。コンビニの恩恵とひきかえに、静かな週末の夜と安心して走れる道路を失った。

(東京新聞埼玉版・5月28日掲載)

by ichiko : カテゴリー:新聞掲載コラム

made by XHTML, CSS, Movable Type.
© Go Go ichiko. All Rights Reserved.