2002年04月17日

ひとくちコラム

●ひとまわり以上年下

プロ野球選手が年下になってしまっていたときに、しみじみと「ああ、わたしはもうけっこうなオバサンなんだなぁ」と実感した。それが「老け」を感じた最初だったと思う。

英会話教室の講師や、行きつけの小料理屋の主人までは現実を受け止めようと努力したが、命をあずける医者までが年下となると正気を保つ自信がなくなる。

仕事関係では、かなり前から年下に囲まれている。若い人が活躍する業界というせいもあるだろうけれど、代理店やデザイン事務所の担当者はみなとても若い。打ち合わせに出向いた受付で、「クリエイティブディレクターの○○さんをお願いします」というとはるかに年下の小僧さまがやってくる、というのにもだいぶ慣れてきた。

先日、打ち合わせをしていたときに年齢の話題になり、担当者のひとりが「ボクは6です」という。「え? 36歳?」と聞いたわたしもバカである。「いえ、26」。

同席していた編集プロダクションのディレクターも同じ年らしく、男ふたりでキャピキャピと楽しそうに話し込んでいる。そう、キャピキャピ、って感じ。なんだか、急に疲れが頂点に達して、わたしはなかばヤケクソ的に叫んでいた。

「ああっ。ひとまわり以上も年下だっ。わたしは、ひとまわり以上も年下のキミたちに頭をさげて仕事をもらっているわけなのねっ。ああっ」。

「それはちがいますよ、イチコさん」「え? なに? なぐさめてくれんの?」「なにいってんですか。イチコさん、今まで一度だってボクたちに頭さげたことなんて、ないじゃないすかー」

そうだったかなぁ。まあ、実際には頭をさげたことはなかったかもしれないなぁ。そうか、さげてなかったか。でも、ホラ、仕事的にはわたしは「あなたさまから」お仕事をいただいておりますという立場であり、ココロのなかではいつも深く頭をさげ続けておるのだ。

気のせいか、わたしがどんどん年を取っていくいっぽうで、担当者サイドは低年齢化しているように思う。こちらは年の差にちょっと気まずい思いをするだけですむが、使う側としてはやりにくいんだろうなぁと想像する。

この先のことを考えると少し不安になる。60歳までは仕事をしようと決めているけれど、果たしてそれまで仕事があるか。このままいくと、50歳になってもわたしは代理店通いをしなくてはならないのだ。


●映画・ソードフィッシュ

わたしの世代でジョン・トラボルタといえば、『サタデーナイトフィーバー』だ。ディスコと、踊るためのお洒落のことしか頭にない青年は、土曜の夜になるとめかしこんでディスコで「フィーバー」する。それだけが生き甲斐の青春ドラマだ。

ひさしぶりに観たら、あまりのダサさ加減に吹き出してしまった。ピカピカのフリルのシャツ、グリースをぬりつけた髪、ダンスステップ。笑いなくしては観られない映画なのだが、あの頃はこれが本気でカッコいいと思っていた。わたしもディスコに通い、サタデーナイトフィーバーがかかると、「フィーバー」したのだ。

その後、『パルプフィクション』でひさしぶりに見たトラボルタは、ずいぶん洗練されたという印象があった。踊りがウマいだけのにいちゃんに、演技力が加わっていた。

悪役を続けていたトラボルタは、『ソードフィッシュ』でこれ以上にないハマり役を得たように思う。トラボルタってこんなにクールだったっけ? オープニングの長い長いセリフでは、なにかが乗り移っているような凄みがある。

『X?MEN』で狼男だったヒュー・ジャックマン、同じく『X?MEN』のハル・ベリーといったカッコいい俳優たちが揃い、あの『マトリックス』を製作したジョエル・シルバーの特殊映像が加わる。

映画のなかでは、あちこちの小物もとてもセンスが良くてお洒落だ。トラボルタがかっ飛ばす車は、英国のスポーツカーTVR「タスカン・スピードシックス」。うう、あんなの運転してみたい。ちょっとしか映らないであろうビルのロビーの椅子も、コルビュジェだったりするのね。

ああ、見て得した、という感じの映画。


●米アカデミー賞

BSで放送された米アカデミー賞授賞式を見た。オープニングはトム・クルーズが出てきて、なんだかものすごく真面目なことを、難しい顔をしながら語っていた。最後は、「あなたにとって映画とはなんですか。会場の人も、テレビの前の人も、ぜひ考えてみてください」と、問いかける形で締めくくった。妙に芝居がかっていて、わたしはあまり好きになれなかった。

数々の賞が発表され、とうとう最後のひとつになり、プレゼンターはトム・ハンクス。アメリカという国は、スピーチがうまくないと人間とはみなされないのか、プレゼンターは賞を発表する前にとても気のきいたスピーチを披露する(大統領みたいに「原稿」がある人もいるのかも)。

さて、トム・ハンクスはなんといったか。「映画とはなにか、簡単です。人と人をつなぐもの、それが映画です。さて、発表します」。

わたしはテレビの前で大いにウケた。彼は、オープニングのトム・クルーズの問いかけを受けて、こう答えたのだ。大袈裟なトム・クルーズとは対照的に、「あ、そういえば」とつけ加えるような言い方をしたトム・ハンクスのほうが何枚もうわてだ。お洒落である。しかも、「なにもったいぶったこと言ってやんでえ」とトム・クルーズのことを小バカにしているように見えたので、なおさら面白かったのだ。


●今月のうまいもの

ハマグリごはん、麦とろ、早瀬浦。

by ichiko : カテゴリー:エッセイマガジン

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