2001年10月19日

最近のイノウエ

「イノウエのメルマガって月刊だから、読むほうも気楽でいいよ」といわれて、ちょっと複雑な気持ちになる。いちおう隔週刊なんである。週一で配信していた元気なときもあった。

最近はあれこれ忙しくて、月刊になってしまっているのを本人も気にかけている。しかし、「そのほうが良いよね」といわれると、うーんどうしたものかと考え込んでしまう。

今月はひとつのエッセイを書き上げる根性と時間がないので、ひとくちコラムにして最近のイノウエをお届けしてみようと思う。


●制覇・その1
今年になって、いきなりわたしは酒飲みに変身した。いままでどこに行ってもビール一杯しか飲めなかったのだが、いまでは大酒飲みへの道をひた走っている。

たぶん、それは地元で遊ぶことを覚えたからだと思う。家に帰るまでの長い時間を思うと、とても都内で酔っぱらう気持にはなれない。やはり、近場である。飲んで食べて酔っぱらって、タクシー15分で帰宅できる気楽さがわたしを酒豪にしたのだ。

おいしい日本酒と和食を出す店に巡り会ったのも偶然ではあるまい。こぢんまりとした静かな店で冷や酒を飲みながら、とろけそうなほどやわらかいまぐろの中落ちを口にいれる。すべての疲れから解放される至福のとき。

二度目に行ったときだと思う。メニューを開いてわたしは考え込んでしまった。日本酒の銘柄が上下二段に渡って、約20種類も並んでいる。どれを注文していいのかわからない。同席していた知人は「そういうときはですね、右端から順番に注文していけばいいんですよ」とにっこり笑う。

そうか、それはいい考えである。とりあえず今日は上の段の右端から3つまで飲んでみる。つぎに着たときは4番目から。そうすればいずれ全てのお酒を飲み終える。時間はかかるだろうが、メニューを制覇したころにはそれぞれの酒の味わいもわかるだろう。

それからというもの、なにかにつけこの店に足を運ぶようになった。仕事先の担当者が来るといえばこの店に案内し、講習会の打ち上げの宴会にも推薦し、友だちが訪ねてくると迷わずここに連れて行く。ありとあらゆる人を連れ込んだ。

そして、とうとうわたしはつい先日、日本酒のメニューをすべて飲みつくした。二段にわたって並んでいる約20種類の銘柄を制覇したのだ。黒龍も天法も美丈夫も酔鯨も、そしてあの十四代もこの喉から静かに胃のなかに流れ落ちてていった。

当初の予想とちがっていたのは、すべてを飲み終えてもさっぱりその違いについてはわからないということである。なんの「うんちく」も語れない。たぶん、ふたまわり目に入れば、もう少し味について敏感になるのではないかと期待している。


●制覇・その2
春に隣の市にイタリアンレストランができた。近くにおいしいお店がなかったので洋モノが食べたくなるとそこに行く。いつも必ず夫と行くせいか、すぐに顔を覚えられてしまった。マルゲリータピザを注文すると、「薄焼きでしたよね?」とウェイトレスがほほえむ。これはもう絶対にほかの男とあの店には行けない。

ここもほぼ全メニュー(料理だけ)を制覇し、「そろそろ飽きてきたよね」といっていたのだが、つい最近メニューの内容が大幅に変更になった。新しいお料理が増えている。さすが、商売上手。一度つかんだお客の心と胃袋ははなさない。


●制覇・その3
メル・ギブソンにはまっている。実はあまり好きな俳優ではなかった。古くは『マッドマックス』から、その後に『フォーエバーヤング』、『マーベリック』を見て、なんだかなぁという気持になった。アメリカやイギリスではものすごく人気があるらしく、ガイジン友だちは「至上最高にクールな男」と絶賛していたので男からも尊敬される存在らしい。が、わたしのツボにはハマらなかった。

ついこのあいだ、ヘレン・ハントが出ている『ハード・オブ・ウーマン』を見た。いま、わたしのなかで旬な女優がヘレン・ハントなのである。『恋愛小説家』、『キャスト・アウェイ』などで注目されている女優だ。バカっぽい恋愛コメディーかと思って見たのだけれど、予想以上に面白かった。女の本心を知ってあわてるメル・ギブソンがなんとも滑稽で笑える。それだけかと思ったら、女のひたむきさや潔さを知ることで自分を振り返り、女に対して尊敬の念を持つようになる男の心理にも奥深いものがあった。

そんなこともあって、ふとメル・ギブソンについて思い出し、『ブレイブ・ハート』を手にした。なんとなく敬遠していた作品だったが、どうしてもっと早く見なかったのだろうと後悔するほど素晴らしい映画だった。イノウエ感動の映画ベスト3!に加えてもいい。

ここ数日はメル・ギブソン週間に突入し、『リーサルウェポン全シリーズ』、『テキーラサンライズ』、『身代金』と続いている。キアヌ・リーブスのおでこがキュートとかブラピがセクシーといっていた自分がお子ちゃまに思える。

●ビデオでプロポーズする
『ユー・ガット・メール』の中で、トム・ハンクスがいう。「ケンカをするのは週末に見るビデオを選ぶときぐらいだよ」。恋人のメグ・ライアンに必死で自分の気持ちを打ち明け、プロポーズしているときのセリフだ。

『偶然の恋人』のベン・アフレックも、恋人を引きとめるために「どんなビデオがいいか、キミにアドバイスしてもらいたいんだ」という。

人生のものすごく大切な瞬間に、ここぞという場面で、どちらも真剣な顔で「ビデオ」の話をする。


●それはわたしのデザインだもん
ある企業のWebサイトを制作した。代理店の担当者から「トップページに使っているイラストの元データを渡してほしい」という電話がくる。元データ、つまりレイヤーつきのPhotoshopデータだ。

その企業では、わたしの作ったWebデザインをそっくり自社のパンフレットに使いたいのだという。商品説明ページのデザインをやけに急がせると思ったら、同時進行でパンフレットのDTP制作を別なところに発注していたのだ。全体的なデザインイメージ、色合い、イラストをそのままパンフレットに生かし、Web用に作ったロゴも商標登録するらしい。

わたしの請け負った仕事はあくまで「Web制作」なので、それ以外の業務にWebのデータを流用したり、商標登録したいのであれば、その部分のお金も払ってもらう必要がある。

最終的な加工画像とHTMLファイルでの納品がわたしの制作料金であるので、元データをそっくり渡すというのは普通はありえない。それを欲しいというのなら、その分は別料金になる。しかも、Web用の画像は解像度を低くして作っているのでパンフレットには使えないはずである。変なことをいう会社である。

というようなことを代理店から企業のほうに伝えてもらった。すると、企業の担当者はいまにもブチ切れそうに怒鳴っていたという。「お金を払って制作してもらったんだから、データは全部こっちのものだ。これ以上なぜまた金を払う必要があるのか」。

ものすごい勢いで怒ってるらしいので、わたしはもうそれ以上かかわりをもつのをやめた。デザインを使いたいなら使えばいい。商標登録すればいい。わたしの仕事はWebのデータだけを納品することであり、それ以上のものは何も渡さない、そう決めて知らんぷりをした。

商品説明のページのために作ったイラストもそっくり真似をするようで、「ここの文字フォントは何を使っているのか教えてほしい」というようなことも聞かれた。DTPの仕事をしているなら、文字を見ただけでフォントがわかるはずだと思う。わからなかったら、ひとつずつ自分のフォントで試してみればいいのである。

デザインの仕事をしていると、ときどき似たようなトラブルにあう。お金を払ったのだから、そのデザインはいくらでもどこでも使いまわしていい、と思っている会社がものすごく多い。それはあまりにも非常識である。

わたしはちっぽけなWebデザイナーだ。たかがWebのページに「著作権」と声高に主張しようとも思わない。けれど、わたしが徹夜して作ったイラスト、脳ミソをふりしぼって考えたデザインとそっくり同じパンフレットができあがる。わたしが作ったデザインであるにもかかわらずわたしのものではなく、デザイン料ももらえないのである。こんな理不尽なことってあるだろうか。その企業の会社概要ページを見ると、年商50億円とある。それだけ儲けていても、パンフレットデザイン料金は払いたくないものなのだな。

by ichiko : カテゴリー:エッセイマガジン

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