2009年04月07日
予感的中と自転車の親子
きょう、ちょっと車で出かけたときのこと。
見通しのよい、けれどもけっこう細い田舎道を走っていたら、
真正面から、ずいぶんと勢いよく自転車が来るのが見えた。
黒い帽子をかぶった女性はスピードを緩める気配もなく、
遠目にも、なんだかあぶなっかしいなあ、という気がした。
なんとなくちょっとイヤな予感がしたので
わたしは道路の左に車を寄せて、待った。
イヤなものはやり過ごしてからまた走り出せばいいのだ。
黒い帽子の女性は車の前に来て、
たったいま気がついたみたいに、急ブレーキをかけた。
見ているこっちが、えっ、と身を乗り出すくらいの
突然の、急停止だった。
びっくりしたその瞬間に、
目の前に黒いものが転がり出た。
女性の後ろには、もう一台自転車がいた。
急ブレーキに反射できずに追突し、
運転者を乗せたまま、道路のまんなかに転がり出た。
女性と同じ、黒いシャツを着た男の子だった。
小学生の低学年ぐらい、たぶん、親子。
一瞬の出来事に身動きがとれずに、
ぼおっとボンネットの向こうを眺めていた。
母親がものすごい剣幕で子どもを叱っていた。
自転車に乗ったまま、まだ倒れている子どもをみおろして。
鬼のような顔でなにかしらを怒鳴っていた。
わたしは車を降りて子どもを助け起こしてあげればよかったのかもしれないけれど、
そうしなかった。
だって、母親でさえ手を貸していなかったから。
だって、ちょっと身体が震えていたから。
もしも、もしも、車を止めていなかったら、
わたしはあの子を轢いていただろう、
転がり出てきた子を轢いていただろう。
ヒイテイタダロウ、
言葉で考えたのはずっと後になってからだけれど、
あのとき、直感的にそれをすぐにわかるから
身体は震える。
母親は怒鳴りつづけ、なぜか運転席のわたしをにらみつけ、
誰にも手を貸してもらえない子どもは自分で起きあがり、
わたしは逃げるみたいにするするとその横を通り抜ける。
行き過ぎてから、バックミラーで後ろの親子をこっそり見やる。
親はどうでもいいけれど、子どものほうが切なかった。
転んで身体は痛いだろうに、
こころのほうはもっと痛いだろうに。
すっころんで痛くて、すっころんで恥ずかしくて、
すっころんで情けなくて、すっころんで怖かったのに、
ひとりぽっちだ。
わたしが母親だったら、怒鳴る前に、
ああ、ぶじでよかったね、とぎゅうと抱きしめて頬ずりをしてやりたい。
ああ、ぶじでよかったね、
あのとき、わたしが抱きしめてあげればよかっただけのことなのかも。
そんな余裕、まるで、なかったんだよ、
まるで、なかった。
by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ
