2008年06月19日
行天宮と占い横丁
初日の朝、まずは「行天宮」に出かける。
台北に来たらとりあえず、行天宮。
なにせ、ここは商売の神様として崇められている關羽が祀られているのであります。
中国史上で初めてそろばんを使ったというお方。
台湾人はオカネが大好きだから、みんなココで一生懸命パイパイ(拝々)するのヨー、と
台北在住の友人は笑っていましたが、
日本人だってオカネは大好きなのであります。
だからなにはともあれ、パイパイ。
廟のなかは香の煙と、熱心にパイパイする人たちでいつもあふれています。
所狭しと並べられたテーブルには色鮮やかなお供えが載っています。
ちなみに、初めてツアーでこの行天宮に連れて来られた時には、
わたしたちはここで置き去りにされました。
ツアーガイドのおっちゃんが、わたしたちのことなど忘れて
つぎの観光地に行ってしまったからです。
中国本土から来たガイドのおっちゃんは、自力でつぎの観光地に合流したわたしたちに、
謝ることさえなく、「ハヤク、お茶、ノミナサーイ」と命令口調で言っただけでした。
パイパイのあとは、廟の目の前にある地下道への入口を降りていきます。
薄暗い地下通路を進んでいくと、突如あらわれる、ハデハデな電飾の光。
この地下通路は、「占い横丁」と呼ばれている有名な場所で、
電飾を下げた小さな占いブースがずらりと並んでいるのです。
さて、どのお店で占ってもらおうか。
「日本語OK」とか「四柱推命」とか書かれている店の前を
ぶらぶらっと歩いてみます。
これまでの人生で、お金を払って占いをしてもらったのは、ただの一度だけ。
とあるお世話になったお偉いひとのススメで占い師に会ってみたのだけれど、
もうこりごり、というのが本当のところ。
だって、アナタ、「大切な財産と愛を失いつづける人生」と言われ、
「ご主人はあなたのことを愛していないですね」と言われ、
そんなことを言われたあげくにお金を払わされるなんて、まっぴらごめんなんざんす。
あれ以来、わたしはその言葉がずーっとこころのなかに、棘みたいに
刺さっているのでありますから。
しかし、ここの占い横丁に行ったという友だちによれば、
「米粒とか拾ってね、ちょっと笑える占いなのよ、それにあそこの占い師さんは
楽しいことしか言わないよ」
ってことだったので、話のついでに、ちょっと占ってもらおうかと思ったわけです。
なんといっても、米粒で占う、っのが胡散臭くて、うそっぽくて、
万が一にも悲惨なことを言われても
だって米粒だしな、と笑い飛ばせるじゃありませんか。
で、占ってもらいました。
こんなにたくさんのブースがあっては、いったいどの占い師を選べばいいのか
わからん、と一瞬戸惑いましたが、
向こうがわたしを選んでくれるようです。
とあるブースの前でなぜだか足が止まり、
中にいるおっさんとハタと目が合い、
むっ、どうしようかな、とためらっていると、
となりにいた夫が、ここがいんじゃない、と言い、
あ、そうね、ここね、とすんなり決まるわけです。
1件300NTドル、総合1000NTドル、米掛(例の米粒を拾うやつだろうな)、四柱推命
と看板にあるので、
じゃあ、四柱推命で1件だけ占う、と言うと、
四柱推命は総合だけ、件数ごとは米掛だけです、とおじさん。
じゃ、米でいいよ、1件だけ、仕事について占ってください、
と言って、わたしはおじさんの前に座った。
目の前に小さな入れ物がおかれる。
そして、小皿が三枚。
「その中から米をつかみ、それぞれの皿の中に入れてください」。
ピアスとか指輪を入れるような小さな入れ物に指をつっこみ、
皿の上に米をばらまく。
お。ピンク色の米だ。
思ったよりも数は多い。
つまんでは米をばらまき、つまんではばらまく。
皿を一瞥したおじさんは、さらさらと紙の上になにごとかを書き、
米と皿を片づけた。
仕事ね、
はい、仕事です。
筆ペンで流れるように達筆な文字を書き付けながら
仕事の運勢やアドバイスをおじさんは話す。
へえ、とか、ほお、とか、はいはい、とか言いながら
わたしは聞いている。
仕事について聞いたはずなのに、
なぜだか性格についてもおじさんは言い当てる。
なかなかに当たっているなあ、とどきどきするが、
米粒ごときに見抜かれるのも悔しい。
達筆な文字が這う紙をいただき、
ありがとさんでした、と頭をさげてその場を後にした。
地下道を出て、外を歩きながら夫と話す。
どうだった、と夫。
いろいろ当たっているような気もするけれど、
まあ所詮は米だしなー、
でもなんだかすごく気持ちがよかったよ、
あのおじさんといると気持ちがいいよ、
と言いながら、
あらあたしって気持ちがよかったんだ、と
初めて自分で気がついた。
すると、
「じゃ総合も占ってもらいなよ」と夫は言う。
え。
「せっかく来たんだからさ、そんなに気持ちのいいおじさんだったのなら
四柱なんとかで総合も占ってもらえばいいじゃん」。
夫が言っている、というよりも、言わされている、ようにしか
見えなかった。
なぜなら、彼は占いには全く興味がなく、どちらかといえばバカにしており、
そんなものにお金を払うなんて信じられない、という人なのである。
「言わされている」のならば、戻るしかない。
わたしたちはふたたび地下道への階段を降りた。
また来ました、と言うと
おじさんは待ってましたとばかりに身を乗り出した。
四柱推命で総合占いをお願い、だけどさっき仕事の件は聞いたから
その1件を差し引いて、1000ドルのところを700ドルでどう?
と値切ると、
いいよ、と意外にもおじさんはあっさりとOKした。
ふたたび、さらさらと達筆の文字が流れる。
ああ、やっぱりね、とおじさん。
なにがやっぱり?
さっきは二つの仕事を両立しなさい、と言ったけど、
三つだよ、仕事は三つ、あなた、男だったらよかったのにね。
男ですか。
だって性格が男でしょ。
ええまあ。
仕事の件はもういいよ、と言ったのに、なぜだかおじさんは
長々と仕事についての運勢を語る。
しばらくは引退はできないらしい。
ひとつ気がかりなのは、夫について聞かれたとき。
手にした分厚い本のページを繰り、夫の生年月日の箇所を探すおじさん。
でも、相性はよろしくないらしいんですよ、とわたしが言うと、
そんなことはないよ、と笑いながらおじさんとあるページでふと止まり、
ばさりといきなり本を閉じた。
だいじょうぶだいじょうぶ、いい相性だよ、夫婦円満と
さらさらとおじさんは書いたけれど、
まるで見なかったことにしようとでもいうように本を閉じたときの顔を
わたしは見逃さなかった。
おじさん、やさしいね。
やさしいおじさんとデコピンのわたくし。
あとで調べたら、どうやらおじさんは有名な人らしい。
by ichiko : カテゴリー:台湾旅行記【2008年】
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