2008年02月26日

空をこえてみたい

ざわめくこころを鎮めるときには、大きな古時計。
勇気を奮い立たせるときには、鉄腕アトム。
と決まっている。

こころのなかで、ひとりひそかに歌ううただ。

たとえば午前二時の布団のなかで得体の知れぬ悪魔に喰われそうになったとき、
たとえばひとり旅の異国の飛行機のなかで眠るとき、
ひそかにこころのなかで「大きな古時計」を歌う。
おおきなのっぼのふるどけい、とゆっくりつぶやくように歌っていると
凪がやってきて、いつしか眠れるものだ。

たとえば無防備に大口を開けてがりがりと歯を削られているとき、
ぐさりと頭のてっぺんを切られているとき、
ぎろりとこちらを睨むさんまから腹わたをえぐりだすとき、
じゅうま~んばりきーだ、とリズムよく胸のうちで繰り返していると
たいていのことは乗り越えられる。
ような気がする。

土曜の深夜、ひさしぶりに鉄腕アトムを歌った。
飲んだくれているので、駅からひとりとぼとぼと家まで歩いた。
国道を走る車がぴたりと来なくなる。
風がごうごうと唸る。
揺れる山の向こうから何かが見ているような気がする。
そらをこえてーらららほしのかーなたー
声を出して歌うのはひさしぶりだ。
おばけとか幽霊とかはまったく怖くない。
いのししと熊がおそろしくてならない。
おばけには喰われることはないだろうが、
真夜中にばったりといのししに遭遇してタダでは帰れないだろう。
最初はためらいがあるが、だんだんと声が大きくなる。
十万馬力だ鉄腕アトムちゃかちゃんちゃんっ、
までいくと、また、空を越えてラララ星のかなたに戻る。
一番しか歌詞を覚えていないので、ひたすら一番を繰り返す。
空を越えてららら星のかなた
空を越えて
空を越えて

越えてみたい。

by ichiko : カテゴリー:山の暮らしぶり

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