2008年01月24日
重量制限と魔女
あしたはとある名門コースのコンペに出る。
夫以外はだれも知っている人がいないという、いわば「度胸づけ」のための参加なのだった。ガラスのハートを鍛えないとね。
組み合わせ表と一緒に「ゲストの皆様へ」という紙が一枚ついてきており、
どうせ、上着を着用のこと、とか書いてあるんだろうなといちおう目を通したら、
まず一行目は、
「ゴルフバッグの重量制限は11kgです」
だった。
どれどれとピンクのバッグを洗面室の体重計の上にのせてみた。
あら。
13kgを超えている。
どんだけ重いんだ、わたしのバッグは。
ま、気にすることもないかな、と一度は流してみたものの、
上着を着用よりもなによりも先に書かれているバッグの重量制限。
甘く見てはいけないのではないか。
ちょっとあせってプロ様に聞いてみると、
追加料金を払えば済むそうである。
お金ですむことならまあいいか。
いや、よくないな。
まずいな。
名門と呼ばれるコースには魔女が棲んでいる。
「あんたが生まれる前からわたしはここにいんのよ」と挨拶がわりに先制パンチを繰り出し、威圧的な笑いを浮かべるおばちゃんキャディ。
シャンクや池ポチャやアリ地獄のバンカーよりなにより、コースを牛耳る年老いた魔女にわたしは身震いする。
お怒りにふれぬよう、ご機嫌をそこねないよう、触らぬ神に祟りなしの精神で、わたしはできるだけ距離を置いてお付き合いすることに決めている。
さすればバッグの重量を超えるなどというのはもってのほか、しょっぱなからこちら側の歩が悪くなる。
わざわざお怒りの種を差し出すようなものだ。
もしやすると触ってはいけない神への冒涜ともとられかねない。
カエルや蛇といっしょに鍋の中でぐつぐつと煮られるのはご免だ。
「たいした腕でもないくせに、バッグだけは立派なことよ、こんなに重いバッグをこのわたくしに押せというのか、押せというのか、押せというのか」
あああああ。魔女の声がこだまする。
わたしは二階から古びたナイキの軽量ぼろバッグを運び出し、
すべてのクラブを移し替えた。
ボールの数も最小限におさえた。
どうか、鍋の中には放り込まないでくださいまし、なんまいだぶ、
体重計のメモリは11kgをわずかばかり下回っている。
ほおう。
ええ、小心者です、気が弱いです、
戦う前から、どっか負けてます。
by ichiko : カテゴリー:さまよえるゴルフ
