2007年12月30日
うぉおんせぇんの怖い話・そのいち
とくに霊感が強いわけではないので、
なにかを見たことはない。
けれどときおり、なにかを感じたり、
なにかが聞こえたりする。
ひさしぶりに声が聞こえた。
温泉の洗い場にはおしゃべりな女の子たちがいたようであります。
永遠につづくのではないかと思うようないくつもの急カーブをくぐりぬけ、
山深い道を上がっていくとやがて長いトンネルへ。
トンネルを分水嶺にこんどは下り道の急カーブ。
峠越えをするといかにもひなびた温泉地に向かっている風情があって、
気持が高揚してまいります。
しかも、オムレツ号を駆ってひとり冬の温泉に向かうなどというのは、
どこかイケナイ密会の匂いも漂ってきませんか(笑)。
といってもこんかいは、yayoiさんご夫妻、halさんご夫妻、そして魅惑の独身男iw@sakiさんというじつに健全なメンバーの集まりなのでした。
予定どおり、わたくしは3時きっかりにチェックインをすませ、
まだだれもいない浴場へと急いだのであります。
わたしひとりだけの温泉、まさに貸し切り。
髪を洗っていると、くすくすという女の子の笑い声が聞こえ、
あ、yayoiさんたちが来たのかも、と泡泡の頭で脱衣所に向かってみるも
だれもいない。
備え付けの炭石けんなるもので体も泡泡、きれいにしてから、
いよいよ、と湯につかって全身脱力。
ほーっとため息をついている背中に女の子のくすくす笑いと
こそこそと話す楽しげな声。
こんどこそ、と脱衣所を振り返るけれど、
だれもいない。
あれ?
内湯にも飽きたので、
外の露天風呂に繰り出してみる。
下には川が流れており、あひるの家族がいた。
対岸には車。駐車場。
いや~ん、まる見えじゃん~とはじらうふうを装いながら、
お湯にどぼん。
入ってしまえば何も見えまい。
湯から出たら見えるよな、と思いつつ、
出たり入ったりを繰り返す。
浴室の中からはときおり女の子たちのくすくす、こそこそが聞こえてくる。
さっきより声は大きくなっている。
けれどガラス窓の向こうの浴室にも脱衣所にも
だれもいない。
なんかいたよね、
夕食の席で思わず言ってしまった。
「へ、部屋にはいませんよね~」と同室のyayoiさんがややびびり気味にたずねてくる。
「だいじょぶ、部屋にはいないみたいです」
わたしは自信を持ってこたえた。
部屋ではなにも聞こえなかったし、感じなかったから。
しかし、部屋にもいたようである。
夜のトークも終わって、yayoiさんにおやすみを言って布団にもぐりこんだのは午前1時40分。
疲れていたからすぐに眠った。
首筋にするりとなにかが流れるのを感じて目をさました。
手をやるとひとすじの汗。
いや、ひとすじじゃなくて、いくつもの筋が流れている。
首だけではなく、胸も腹も太ももも全身がぐっしょりと濡れるほどの
汗をかいている。
なんだこれ。
時計を見ると午前2時きっかり。
まだ20分しか寝ていない。
むくりと起き上がると、汗で濡れた体はいっきに冷えて
身震いするほど寒い。
さむい。と言って寝る。
首にひとすじの汗。いやひとすじじゃない。
午前3時、午前4時、同じことを繰り返した。
翌朝、なんだかよく眠れなかった、
とyayoiさんに言うと、
「あ。わたしは夢を見ました。夢におりんちゃんみたいな子が出てきました」
あらら。
寝る前になぜだかyayoiさんとわたしはおりんちゃんの話をした。
おりんちゃんというのは、宮部みゆきの『あかんべえ』に出てくる女の子だ。
おりんちゃんは、自分の家に出てくるお化けさんを見ることができるのである。
そんな話をしたせいかどうなのか、yayoiさんは夢の中できれいな着物を着た女の子を見た、というのである。
「むかしの七五三で着るような、古ぼけているけれど立派な着物だったよ」
そういえば、家に帰ってきてから思い出したのだけれど、
温泉に入る前に、浴室に付いているトイレに行ったんだった。
ドアを開けた瞬間に上から棚が降ってきた。
どんがらがっしゃーんとものすごい音がして何事かとびっくりしたんだけど、
備え付けの棚板が落っこちてきたのでした。
とくになにも考えずに、よいしょよいしょとわたしは棚板をはめこんだのだけれど、
いたずらされたのかな(笑)。
by ichiko : カテゴリー:旅に出た
