2007年09月08日

夕方の自転車置き場にて

送り迎えをしてくれる人もいないから、
ひさしぶりにきのうはMyジャガーをこぎこぎして駅に向かった。

自転車置き場に入ると、
裏の草むらからみーみーと子猫が集まってくる。
なぜだか自転車置き場にはずいぶん前から野良猫がすみついている。

いちばん後から出てきたやつは、
鳴き声がせっぱ詰まっていて、
見ると左の前脚の先がなくなっていた。

あんた、いったいどうしたの。

子猫は自分でもわけがわからないっといった様子で
あるはずのものがない脚をぶらりと下げて、
ひーひーと鳴いている。
赤く染まったその先から細い骨が飛び出している。

わたしは目を背けた。

震える手で自転車の鍵をロックするわたしの足もとに
ほかの子猫がやって来ては、みーと鳴く。
お願いだよ見てやってよ、
お願いだよ助けてやってよ、
そう言われているような気がしてならなかった。

逃げるように自転車置き場を離れ、
駅に急ぐ。

今夜は予定があるんだ、
この電車に乗らないといけないんだ。

死ぬんだろうな、と思った。
あの脚では餌もとることができない。
傷跡も腐っていくのだろう。
あの小さな体ではすぐに死んでしまうんだろうな。

きっと、
きっと横綱くんだったらいますぐにあの猫をひっつかまえて
病院に連れていくのだろう。
今夜の予定などすぐにキャンセルして、
自分のTシャツを血まみれにして、
猫を抱くのだろう。

死ぬんだろうな。
たとえ病院に連れて行って、怪我の治療をしたとしても
左脚のないままでは野良としては生きていけるはずがない。
どっちみち、死ぬのだ。

電車に乗ってから紙袋を忘れたことに気がついた。
お店に返すはずのタッパーを入れた紙袋。
子猫に気を取られ、
逃げることばかりに必死で、
自転車のハンドルにかけたまま、持ってくるのを忘れてしまった。

わたしは取りに戻るべきなのだ。
電車を降り、つぎの電車で引き返し、
あの子猫を拾って病院に行くべきなのだ。

だけどわたしは電車を降りなかった。
何食わぬ顔で店に行き、
友だちに会い、
酒を飲んだ。
飲んだ。

by ichiko : カテゴリー:ねこと動物たち

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