2007年09月03日
異空間に飛ぶ
友だちには傾向というものがあるんだなきっと、
と東京ドームのとなりの天然温泉につかりながら
わたしはひとりで納得していたんである。
傾向。
たとえば、気がつけば会うのはいつも灼熱の表参道、食べるのはタイ料理という友だちがいるように。
そうするときょうのあなたはさしずめ「裸の友」であるね、
と言うと、
そういえば会うときはいつも裸ね、
と湯気の向こうでつるりんとした顔の友がふふふと笑うのだった。
裸の友は超リラクゼーションの友でもある。
彼女と会うときは決まってエステかマッサージか温泉のいずれかがセットになっている。
始まりは沖縄だったろうか。ホテルに到着するやいなや二人でエステルームに駆け込み、アロマオイルのマッサージを受けながらうっとりとよだれを垂らした。
韓国では汗蒸幕(赤外線ドームのサウナ)、人参風呂、あかすりのコースでつるつるのぴかぴかになった。
余談になるが、あかすりでは客は鍋釜同然の扱いだ。風呂を上がったところに並んでいるベッドの上に寝かされ、うつ伏せにされ仰向けにされ、ごろごろ転がされ、足を持ち上げられ、股を開かされ、もの凄い勢いでこすられ、バケツの水を道路にまく時のようにざばんざばんと桶で湯を投げつけられた。日本のエステでは考えられないほど、大雑把で豪快で手荒い。わたしは鍋にでもなったような気持ちがした。おまけにとなりのベッドとの仕切りもなく、タオル一枚かけてくれるわけでもないので、股を持ち上げられたあられもない姿を友人に、あるいは他人に堂々と披露してしまうことになるのである。
友が我が家に泊まりに来たときにも長瀞の鮎飯を食べた後にはやはり秩父の温泉に向かった。
そしてきのう。
昼間からゆっくり会おうよと誘ったわたしに、
彼女が指定した場所は後楽園のラクーア・スパ。
温泉のほかにもエステやマッサージが充実しており、リラックスルームなどもある。
「ようこそ、美と癒しのリゾートへ」というキャッチコピーを見て、
裸の友が落ち合うにはぴったりの場所だと思った。
なにをおいてもまずはエステだマッサージだよだれだ。
数あるサロンのなかから選んだのは「ハワイアンロミロミ」のトリートメントマッサージ。
わずか90分でゴルフのラウンド1回分とほぼ同じ値段かあ、と貧乏くさいことを考えているうちに、
こわばっていた体のすみずみがほどかれていく。
じわじわと体の深いところから温かくなってくる。
あまりに気持ちがよくて眠ってしまいそうになるが、
わたしは眠ったことがない。いつも意識はある。
けれど意識はどこにあるのかわからない。
ふわふわと遠いところで浮かんでいる。
永遠の時のようでもあり、
ほんのわずか数秒のようでもある。
時間の感覚が消えてしまう。
これで終了です、と静かに耳元で囁かれ、
するりと現実に呼び戻される。
すこしの間がある。
あちらとこちらのギャップを埋めるためにすこしの間が必要になる。
エステルームを出ると、
すっごくすっきりした顔してるよ、
と裸の友が驚いたように言った。
わたしがエステやマッサージを好む理由は、
異空間に飛んでいけるから、
なのだとようやく気がついた。
by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ
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