2007年01月05日
ムとマ
まるでカローラのようにベンツやBMWがあふれている都会ではよその国の車などはめずらしくもなんともないのだろうけれど、山山山のいなかではなにやら目立つ存在のようである。
いろんなひとに声をかけられる。
コンビニの駐車場だったり、スーパーの駐車場の係員のおっさんだったり、郵便局の窓口のおっさんだったり、市役所の駐車場の整理係のおっさんだったり、そう、声をかけてくるひとはほぼ間違いなくおっさんだ。
そうは見えてもじつはわたしよりも年齢的には若いんだろうなあというおっさんもたまにはいる。
これ、排気量はどれくらいなの?
きっかけはー排気量っ、なんである。
まるでせりふの練習をするみたいに、だれもが同じように排気量をたずねてくる。
排気量がそれほど重要なこととは思えないけれど、排気量についての質問はやあいいお天気ですねというあいさつと同じぐらいあたりさわりのない、ごく自然でまっとうな会話の出だしであるのかもしれない。
さんてんはちっ、とわたしは答える。
すこし機嫌のいいときだと、さんてんはちリッターです、と答える。あんまりちがいはないけれど。
そうして、おっさんたちはみなムスタングと発音する。
へぇームスタングかー、とか、ムスタングっていい車ですよねーとかそんなふう。
どこらへんが分水嶺になるのか定かではないけれど、年配のおやじたちはまちがいなくムスタングという。
わたしは、マスタングだ。
売り子のフォードのあんちゃんもマスタングだ。
mixiのコミュ名もマスタングだ。
どっちなんだろう。
ということで。
ガイジンの友だちに、ちょっと発音してみてよ、本場の、本物の発音を聞かせなさいよ、と詰め寄ったことがある。
Mustang!
とガイジンはなんでそんなことを聞くんだよという顔をしながら発音する。
げ。もう一回。
その場にいた三人の日本人は耳を特大サイズに拡大して聞き入る。
だからMustang!だよ、とガイジンは言う。
大きくなった耳はみるみるうちに力なくしぼんでいく。日本人はみなだんまり。
それはムスタングではないけれどもマスタングでもなく、ムとマを混ぜたような音だった。結果的にはムでもなくマでもない。
どちらでもない。
うちの国にはない、よその国の音なのだった。
by ichiko : カテゴリー:山の暮らしぶり
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