2006年12月10日
ファックスの行く末
けっこう設備が整っているホテルらしいのだけれど、インターネットはまったく使えないそうで原始的な方式にてFAXが届いた。
ツマは這々の体で家にたどり着かねばならぬほど酒に浸っていたころ、アルコールを手に入れることが厄介な国にて夫は一日の仕事の終わりにビールにもありつけずにトホホな夜を送っていたらしい。
というようなことがホテルの便箋にびっしりと書かれている。にょろにょろと今にも這いずり回りそうなみみずのペルシア語の文字とさほど変わらぬような夫の字はなんだかすこしなつかしい。
あちらの連絡先も詳しく書かれているので、すぐにでも返事を出したほうがいいのだろうけれど、つい先送りになってしまっている。
むかしは、なにを置いてもまず返事を送ったものだ。では、あのころにくらべて愛が減ったのかといえばそうでもない。断じて減ってはいない。質は変わったのかもしれないけれど、まあそれはちょっといまのところは置いておいて。
ただ、ちょっと面倒だなあと思うのだ。書いて、FAX番号を控えて、スタートボタンを押して、つながったかどうか確認してという簡単なことではあるけれど、そういった細かい手順などを考えているうちに面倒になってしまうのだ。やはり、これは愛のモンダイなのだろうか。
いつだったか、ほぼ地球の裏側であろうエクアドルにFAXを送ったことがある。何度も送っているのだけれど、夫からのFAXを読むとこちらからのFAXは届いていなかった。連絡がなくて心配しているようだったので、電話もかけた。いつかけてもミスターイノウエは不在だった。伝言を残すと「オーケーオーケー」と愛想だけはいい。しかし、夫にはその伝言も届いていなかった。
なにかがおかしいと思ったので、KDDのオペレータを通して(一回5000円もかかる)かなり苦労をして電話をつないでもらった。オペレーターのひともあきれるほど「いい加減」で「うそつき」なホテルマンだった。
わたしの伝言はなにひとつ夫には届いていなかった。じゃあFAXはどこに消えたのかといえば、文句をいいにフロントに行ったら、なんとホテルマンはFAXを細かくちぎってメモ用紙として使っていたというのだ。はるか地球の裏側から夫を想ってしたためたわたしの愛の手紙が、異国でウンチ紙として流用されなかっただけでもましなほうなのかもなと思ったりした。
よその国には、伝書鳩よりも役に立たないホテルマンもいるのだ。そんなこともあって、先進国ではない地域のホテルにFAXを送るのが億劫なのである。
イランのホテルマンはもしかしたらとても優秀なのかもしれない。にっこり笑わないまでも、ミスターイノウエふろむジャパンにちゃんとFAXを届けてくれるかもしれない。
けれど、頭のすみでは飛ばない伝書鳩がもっそりと座っており、わたしの文字が書かれたFAX用紙が異国の地でじゃがいもを包む紙きれになっているのを想像してしまうのである。
by ichiko : カテゴリー:夫、身内について
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