2006年11月21日

飲んだくれのはしくれとして

銀行などにも行かねばならず、昼はひさしぶりに街のラーメン屋に寄った。

座って間もなく、あきらかに常連と思われるおばさんが、デカい声をだしながらにぎやかに入ってくる。

座るといきなり、店主を相手に愚痴をこぼすのだ。
「もうさ~、○○さんたらさ、こないだマスターと喧嘩しちゃってさー」
おばさんは近所のスナックのママであるらしい。

「○○さんは、酔うと話がしつこいからダメなのよ、もうイヤ、本当にしつこいの、何度も同じ話をするしさ、うるさいのよ」
というようなことを、店中に響き渡る声で話すので、わたしはおばさんの愚痴を聞きながらラーメンをすすることになる。

「もうね、ほんと、あの人は酔うと話が長い。しつこくてイヤ」

酔っぱらいはしつこいものなんだよ、長い間酔っぱらいの相手をしていて、そんなこともわかんないのかよ。

「でね、喧嘩しておきながら、つぎに来たときはあっけらかんとしちゃってさ、酔ったときのことなんか、みーんな忘れているのよね」

あたり前である。酔っぱらっているときのことなんか、覚えているはずがない。それが酔っぱらいなんだから。あんた、本当にママなのかよ、プロなんじゃないのかよ。

「もう、ほんと困っちゃってんの、ずっと同じ話をするのよ、しつこいったらないのよ、だから酔っぱらいってイヤなのよ」

しつこいのはあんたのほうだ。わたしがラーメンを食べ終わっても、まだその話をしている。さっきからずっと同じことをしゃべっている。しかも、あんたは「しらふ」だ。酔っぱらいがイヤなら、スナックのママなんて仕事をするな。

ムカムカしながら店を出た。ラーメンの味がまずくなったような気がする。「あのおばんは許せん」とつぶやいていると、「なんでそんなに怒るのよ」と夫がいう。

だって、そうじゃないか。
スナックというのは、おじさんたちにとってはある意味では安らぎの場ではないかと思う。特別な場所である。馴染みの店で酔っぱらって何が悪い、同じ話をして何が悪い、記憶をなくしてどこが悪い。それが酔うってことじゃないか。それを受け止めるのが、スナックのママってものじゃないのか。

あんなふうに地元のラーメン屋でほかの客にも聞こえるように愚痴られるのだとしたら、おちおち酒も飲めない。酔っぱらうこともできん。スナックのママに「だから酔っぱらいはイヤ」といわれるのなら、飲んだくれはどこで酒を飲めばいいわけよ。

by ichiko : カテゴリー:美味しい物・酒

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