2006年08月23日

謎のエージェントあらわる

呼ばれたときにだけあらわれる秘密のエージェントだ、とその男はあやしい自己紹介をした。

えっ、いやっ、よ、呼んだ覚えなんてありませんケド。
キミのこころが呼んだのだ。
呼んでません、だーれも呼んでなんかいませんっ、
じゃ、神さまがかわりに呼んでくれたのだよ、だから、ほれ、書きなさい、小説をっ、

エージェントと名乗る男は、れっきとした作家である。そんなことぐらい、わたしだって知っている。小説のしの字もしらないわたしに近づいてくるその魂胆はなんなのか、あらやだっ、わたしのこのホーマンな肉体が目当てなのかしら、いやそれはナイな、ぴちぴちの若奥さまを溺愛している彼にとってそれだけはナイな、じゃ、金か、いや、それもナイな、自分で書いたほうがはるかに印税を稼げるはずだろうからね、うーんうーん、

ずばりお聞きいたしましょう、なぜにあなたはエージェントとしてやって来られたのか、
読みたいし、
えっ?
いや~、読んでみたいのよ、読んでみたいのだ、文才がナイナイって騒いでいるおばはんが果たしてどんな小説を書き上げるのか、読んでみたいんでーす、読みたいのっ、

さすが作家。人のこころの奥底を読み通していらっしゃる。
かくしてわたしは謎のエージェントに追われる身となるのである。

by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ

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