2006年06月26日

とうきびの秘密

キミは上の歯をつかっているね、
と、とうとつに夫がいう。
だから、汚いんだよ。

わたしが食べたとうきびは
汚い。
一列目さえうつくしく食べられたなら
きっとうまくいくにちがいない、と思いながら
いつも出だしから最後まで汚いままで過ぎてゆく。
残された芯には
実を包んでいた薄皮の破片や
黄色い実が、
ぐちゃぐちゃとくっついて
ほんとうに汚い。

しばらく横から眺めていた夫は、
上の歯をつかっているね、
と指摘した。
たしかに、
リスがどんぐりをかじるみたいに
上の前歯をメインに、がしがしと食らいついている。

下の歯なんだよ、下の歯。
ずらりと実が並んでいる列と列のあいだに
下の前歯をぐいと押し込んで
さっとひきあげる。
上の前歯はちょっとささえてあげる程度ね、
ほら、きれいにとれるでしょう。

はい、下の歯ですね、下の前歯を列と列に押し込み、
おっ、
およよっ、
およよよよーっ。

ン十年とうびきを食べつづけてきて
はじめて知った、下の歯のつかいかた、
こんなにきれいに食べられるとは。


注:「内地」ではとうきびのことをとうもろこし、というらしい。もろこしってなによそれ、と蝦夷の民は不思議でならぬ。

by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ

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