2006年04月29日

楽しみを希う心

その撮影家を知ったのは、去年の秋、世界遺産になった知床の秘境が放送されたときだ。太もものあたりにハイビジョンカメラをくくりつけ、モーターパラグライダーで超低空を飛びながら撮影する。くっきりと周りの木々を映す鏡のような知床五湖の上を滑り、羅臼岳の断崖に迫り、知床の深い原生林を進んでいく。

飛行撮影家の矢野健夫さんは、モーターパラグライダーを使ったハイビジョンによる空撮という新しい世界を切りひらいた人だ。木曜の夜、「報道ステーション」で放送された「感動絶景・吉野桜」もまた矢野さんの空撮によるもので、桜で埋め尽くされた山をギリギリにかすめるように飛び、右に左へと風に乗って自由に揺れる視点は鳥の目そのものだ。

そう、まるで鳥。鳥の視点で自然を眺めるのがこれほど気持ちのいいものだとは知らなかった。俯瞰、ただ上から見るだけとはちがう、さっと桜の花びらに触れるように身を寄せたかと思えばゆっくりと旋回しながら遠くの山肌に視線を向け、また一本の桜を目指してぐんぐんと降りていき、そして風にあおられては高く舞い上がって山を見渡す。風に揺れて、風にさまよう鳥のようだ。

夕暮れの桜がとくに美しかった。夕陽の赤が染みこんだ桜色に、なぜか胸がじんじんと熱くなってくる。バックには、「楽しみを希う心」というピアノ曲が流れていた。揺れる揺れる、鳥になったまま、こんどはこころが激しく揺さぶられ、赤が染みた桜色と情熱のピアノの音にこころが激しく振れていく。

by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ

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