2006年03月22日

郵便局まで

国道に出る小さな橋、仙人の宿と浮き世をつなぐ橋とわたしは呼んでいるのだけれど、そこをこえるときはいつも車である。歩いても20分ほどの駅であれ、その手前にあるタバコの自販機であれ、郵便局であれ、かならず車を使う。

歩く範囲は橋のこちら側にかぎられており、おたまをすくった河原もねこを拾った墓地もブルベリーが栽培されている畑も仙人地域にある。

さて、きょうは午前中に郵便局に行かねばならず、気分を変えて歩いてみることにした。橋の手前で道路工事をしているので、車をつかうとあれこれと面倒をかけることになるからだ。

ちょうど玄関を出たところで工事のおぢさんに会い、
「お、出かけるのか」と聞かれ、
「歩いて行くからだいじょうぶ、気にしないで」と言うと、
「オレが先に行って工事車輌をよけるように指示しておくから、車で行きなはれ、心配すんな」などといってくれる。
だいじょぶだいじょぶ郵便局までだし、郵便局は遠いべー車で行けばいんだべー、などというやりとりがあり、アリガトねーと手をふってぽくぽくと歩き出す。

橋をこえたあたりでマロンリジの車とすれちがい、わざわざ車を停めて窓をあけるのでなにごとかと思いきや、
「歩いてんのか、めずらしいこともあるもんだなー」とにやにや笑う。
「たまにはねー」とこたえると、
「歩け歩け、体力ないんだから、つぎのコンペで負けないように鍛えておけ」とリジはげらげら笑うのだった。わたしの歩く姿は、よほどめずらしいのだろう。

郵便局までは1キロにも満たない距離で、マラソンに参加している友人や軽々と40キロを走る自転車好きの友だちには笑いとばされるにちがいない。馬の背と呼ばれる長い長いのぼり坂のカーブをこえるとこんどは下りになり、その先に郵便局がある。

用事をすませたあと、近くの○○商店と書かれたちいさなお店に入ってみた。10年も住んでいながら一度もこのお店に行ったことがないのは、駐車場がないからである。ロールパンとチーズ、なぜかオロナミンCを買って店を出る。

いつも車でびゅんびゅんと通りすぎる道は、歩いてみるとまるで別な風景になる。古い木造の家を眺め、庭先につながれている犬たちにあいさつをする。ふとあらわれたような脇道に誘われ、細くうねった小道を進んでいくと、はるかむこうに白梅の霞がただよっている。この道をたどっていくと、あの山につながるのだろうか。細い道には、たぐりよせられるような、あやしげな誘惑がある。

時間ができたら、春の小道の誘惑にのって、どこまでもずんずんとすすんで行きたいな。

by ichiko : カテゴリー:山の暮らしぶり

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