2006年03月10日

甘太郎焼きのおぢさん

気分転換に、街まで甘太郎焼きを買いに出る。

国道までの砂利道は先週から工事を行っており、車一台しか通れない細い道では住人や宅配便などの車が出入りするたびに、シャベルカーやダンプは作業を中断してどこかの空き地まで移動することになる。もうしわけないので、できるだけ夕方5時を過ぎて作業が終わってから出かけるようにしてはいるのだけれど、きょうはとにかく甘太郎を優先したい気持ちなのだった。

黒と白を5個ずつ買い、甘太郎が焼かれているのをガラス越しに眺めていた。甘太郎をのせた銀の型が右はしに到達し、さあどうするのかとじっとみつめていると、こんなのはなんでもないことさという風に、軽々と二列目のすきまにすべりこんだ。

おっ、すごいっ、と思わず声が出て、するとガラスの向こうからおじさんが出てきて、「はい、これあげる。失敗作だからあんこは入ってないよ」と、銀の型からひょいと持ち上げた甘太郎を手渡してくれる。

わー、うれしー、ありがとうー、と子どもみたいによろこんで、あつあつのあんこなし甘太郎をほおばる。皮がかりっと香ばしく、ホットケーキみたいな味がした。

あんこなしじゃかわいそうだから、と、こんどは黒いあんこをたっぷりのせたちっちゃなホットケーキ甘太郎をてのひらにのせてくれる。わー、あんこもつけてくれたのー、といいながら、はふはふと口にいれる。今夜の感謝リストには、ぜったいおぢさんの名前もいれるからね。

この甘太郎焼きのお店は、開業して47年になるそうだ。「あなた、生まれてないでしょうー」といわれ、はい、影も形もありませぬ~と笑う。駅前のお店はつぎつぎと名の知れたチェーン店に変わっていく。あの小さなお店からこの街を見続けてきたおぢさんに、いつかもっと話を聞きたいな、と思う。

帰り道、国道から折れ、砂利道に入ったとたんにはっとする。工事のおぢさんたちにも甘太郎焼きを買ってくればよかった。こんなに寒い日、そぼ降る雨のなか、朝から働いているのである。甘太郎焼きのおぢさんにあれだけ親切にしてもらって、自分だけよろこんでばかりいて、ほんとうに気のきかない女である。つぎこそはかならず。

by ichiko : カテゴリー:美味しい物・酒

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