2006年03月02日

夫のアヤシイ行動(7)

あらま、このシリーズ、ことしはまだ書いていなかったのね。アヤシイそぶりのひとつもない配偶者というのも、どこか面白みに欠けるものなのである。

ボクさぁ、今晩、出かけることになっちゃったのよ、
と夫がいう。
はっ。
ふたりのあいだに流れる不穏な空気。

えへへ、アヤシイでしょ、
と自分からいってのける夫というのもつまらない。
ちっともアヤシクないわよ、
と素知らぬふりをしてみるが、
こんな夜中にどこに行くんだろう、
そういえばさっきスカイプしてたっけなぁ、
もしかしてモトコから呼び出しがあったのかしら、
などという疑念がちらちらと通り過ぎてゆく。

じゃあ出かけてくるよ、
と玄関先から夫の声が聞こえ、
はいはい、とお見送りに出た瞬間、
こみあげる笑いをおさえるのがせいいっぱいだった。

ここのところ、夫はオヤジ化が急速に進んでおり、
男というものを捨てきっている。
家にいるときには、ジャスコで売っているような
いかにも安いっぽいシャカシャカの上下を着ており、
このぶんだと春先からはジャージの上下に変わるのではないかと思われる。
近くのコンビニならまだしも、
ちょっと街に出るときにもその安っぽいシャカシャカのまま、便所ぞうりのようなサンダルをつっかける。
この寒空に、どうしてサンダルなのかはわからないが、
(しかも、靴下をはいたうえにサンダルだ)
たとえば、
「今晩は何を食べにいこうか?」
と聞かれて、
くたびれたシャカシャカにサンダルをつっかけるオヤジに、
「イタリアン」
といえるわけがない。

それでも夫なりにハレとケの区別は明確にあり、
シャツにコットンパンツ、スニーカーを履いて出かける日は彼なりのおめかしなのである。
とりわけ、黒いラルフローレンのシャツを着込む日は、
モトコと逢うハレなのではないかと踏んでいる。

玄関先に立つ夫は、シャカシャカの上下のままであった。
なにを履くのかとさりげなく視線を落とすと、
やはり靴下のうえに便所ぞうりだ。
なんだ、つまらぬ、ちっともアヤシクない。
じゃあね~、行ってらっしゃい~、
と手をふりながら、
この格好の夫であっても恋ごころはさめぬ、
それでも大好きなんです、
という女であるのなら、
わたしは完全に負けをみとめよう。

by ichiko : カテゴリー:夫、身内について

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