2005年12月28日

バラ色の日

すてきな人に出会うと、一日がバラ色になる。ほんのちょっとした気遣いがうれしくて、煮物をしている最中などにまた思い出したりしては、一日中、心でにんまりと笑っている。

先週、買い物を終えてエレーベーターに向かうと、ちょうどエレベーターの扉が開いていた。中にはたくさん人が乗っており、待たせるのも悪いと思って「のらないですよ」という意思表示としてゆっくり歩いた。すると、こちらを向いて立っていた若者のあんちゃんが、閉まりかけた扉にがつっと足を突き出す。がたん、ごとんと音とを立てて扉が開く。こ、これはもしかして、あせって走る。ふたたび、閉まりかけた扉にあんちゃんが足を突き出す。がたん、ごとん。待っていてくれたのだった。

きょうは朝早くから市民清掃センターに出かけた。買ってはみたものの、二度しか使わなかった巨大なルームランナーを、いよいよ捨てる日が来たのである。やっほほーい。年内最後の搬入日はそうとうな混雑が予想されるので、朝一番に乗り込むべく、年末進行で弱っている夫をたたき起こす。

清掃センターはすっかり年末仕様になっており、自分たちでそれぞれのゴミ捨て場に向かうのではなく、決められた場所で一括で分別して捨てられる仕組みになっていた。ゴミ収集車が後ろ向きに口をあけて、祭りの夜店のようにずらりと並んでいる。それぞれの車には、可燃、不燃、雑誌、などと大きく書かれた紙が張ってある。

さあ、捨てるぞ。車の後ろを開けると、まるで夜逃げでもしてきたかのようである。ルームランナーを捨てるというのが当初の目的であったのだけれど、わざわざ清掃センターに行くのだから、とわたしはここ二日間を「魔界」の清掃に捧げたのである。魔界とは、二階の夫の仕事部屋だ。片づけられない脳の持ち主である夫は、家の中で一番広い十四畳の部屋を、魔界に変えた。壁という壁、床という床が物で埋め尽くされた様子は、テレビの特集番組などで映し出されるゴミ屋敷そのままである。目的はルームランナーから魔界への挑戦になり、あらゆる物を分別し、袋に入れ、束ねてやった。おかげで、台所、自分の部屋、風呂場、年賀状などは手をつけられないままであるが、魔界を消滅できたいま、偉業を成し遂げたような気分でもある。

さあ、捨てるんだ。DOS/Vマガジン5年分、プリンタパソコン周辺機器お歳暮いただき物の段ボール箱4年分、まだLサイズだったころの夫の服、なぜか書類の山からわきでてきた空き缶、ゴミ、ゴミ、ゴミ。「布はこっちだよ~」「はいはい~、燃えないものはココだ~」、それぞれの車のわきに案内係のおじさんが立っており、やはり夜店のごとく、呼び込みの声を張り上げる。夫とわたしは袋をひっさげて、コレはそっち、ソレはあっちと走り回る。

雑誌の山に手をかけたとき、「ほら、よこせ」と係のあんちゃんが声をかけてきた。車の中に手をいれると問題が起きるから、オレの手に渡せ、というのである。差し出した手に、遠慮がちに三束ほど雑誌をのせる。もっともっと、というので、どんどん載せていく。あんちゃんはびっくりするほどの力持ちで、頭をこえるほど載せても平気な顔をして、もう片方の手にも抱えて歩いていき、また戻ってきては、載せろ、というのだった。

すべてのゴミを車から降ろし、粗大ゴミの料金を払ったあと、雑誌と書かれた車の横に立っているあんちゃんのところに行き、アリガトウといった。あんちゃんは、照れくさそうにちょっと笑った。きょう、彼はどれだけの雑誌を運んであげたのだろう。

すてきな人に出会うと、一日がバラ色になる。

by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ

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