2005年08月11日

細い階段の向こうに

金髪の友人は、表参道の人混みのなかでもすぐに見分けられる。12時きっかりに、友人とそのご主人がやってくる。ビルの隙間のような狭い路地に入り、細い廊下を歩いて小さなエレベーターに乗り込む。『椿』という名の店には、もう1人の友人がすでに待っていた。

わたしをのぞく他の3人は、表参道、青山を熟知している人たちで、このお店とも長いおつきいあいのようである。この日いただいた、朱塗りの大きな器に色とりどりのおかずが並び、いくつかの小皿料理もついたお昼の「お弁当」は、板前さんが4人だけのためにこしらえてくれた特別メニューだという。

それが東京の常識と17年前に教わったので、お友だちの後ろの席に有名人が座っていても、わたしはそ知らぬ顔をきめこんだ。そうはいっても、お友だちと話をするたびにその方の顔が視線に入るので、遠く山里から「上京」したわたしはどうしてもちらちらと見てしまうのだった。

おいしい料理に舌がよろこび、友人たちとの会話に心が躍る。友人といっていいものかどうか、悩んだときもあるが、あるときからわたしは心を決めた。デザイナー、キャメラマン、ライター。もし仕事の関係だったのなら、わたしなどは対等に口をきいては申しわけないような経歴をお持ちの錚々たる人物である。正直なところ、びびる。わたしがここにいてもいいのか、という気持ちになる。けれども、仕事がらみで知り合ったのでもなく、幸か不幸か仕事のつながりもない。だったら、お友だちとして向かい合おう。ときおり食事をして楽しく話す友人なのだ。そう決めたときから、心持ちが楽になり、ありのままの自分を見せられるようになった。

さて、食事のあとはお茶の時間である。急な階段をのぼった二階にある、隠れ家のようなカフェでコーヒーを飲む。大きな無垢のテーブルに、デザイナーの彼はいまにも頬ずりをせんばかりだ。

お茶のあと、男子2名は仕事に向かい、残った女子は南青山を散歩する。ビルの小さな入口を抜け、これまた小さなエレベータに乗り込み、夜はバーになるであろう長い木製のカウンターがあるカフェにたどり着く。アイスコーヒーをいただく。

ひとしきり話をしたあと、だらだらと表参道を歩き、中国茶のお店に入る。壁にはかわいい茶器が並べられた細い階段をのぼり、エレベータに乗る。ぐつぐつと煮える電器ポットを前に、中国茶を飲み、あれやこれやと語る。

ようやく日も落ちていくぶんか涼しくなったころ、新宿に向かう。あやしげな路地を曲がり、焼き肉屋の煙をあびながら、小さなビルの廊下を行く。心細げなエレベーターに揺られ、店に入る。ビールを飲んで待っていると、もうひとりの友人があらわれた。彼女もまたみごとな金髪。金髪ユニットのような女子ふたりとげらげらと笑いながら、甘くて酸っぱくて辛いタイ料理をいただく。

細い階段、あるいは廊下、そしてごとごとと揺れる小さなエレベーター。その向こうには、胸が高鳴るドラマが待っている。

by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ

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