2005年05月06日

邂逅

「いのうえっ」と呼ばれたような気もしたけれどすぐには反応できず、並んで歩いていた友だちがトントンと腕のあたりをたたいてくれたおかげでハタと立ち止まった。たとえば市内のスーパーで豆腐をつかんだ瞬間に後ろから名前を呼ばれたときなんかはちょっと照れくさい思いをしながらもすぐに振り返る反射神経が準備されているのだけれども、東京というおそろしく広い都会で、しかもめったに訪れることのない目黒という場所で誰かに声をかけられるなどとは考えも及ばぬことだったので、わたしを呼んでいるのだと気づくまでに時間がかかった。

こんなところで、こんなふうにして人に出会えてしまうから、生きているってなんだかとてもきらきら光っているよなと思う。

思いがけない場所で、あの人混みのなかからわたしを見つけてくれた彼は、数えるぐらいしか会ったことがないのになぜだかとても親しみを感じる人だ。代理店で紹介されたデザイナーさんで、冬に飲み会で会ったときに、わたしの友人と同じ駅に住んでいるということがわかった。
「わたし、ときどきその友だちの家に泊まりがけで遊びに行くんだよ」
「駅からどっちの方向?」などと彼が聞いてきたけれど、土地鑑のないわたしは答えられなかった。

今回わたしは目黒の友だちに会うやいなや、「ねぇねぇ、知り合いのデザイナーさんが同じ駅なんだって」と話し、「おもしろいよね、すぐ近くに住んでいたりしてね」などと笑っていたのだ。その何時間かあとにその本人にバッタリと出会うことになり、わたしも、そして友だちもほんとうに驚き、彼と別れたあともしばらくふたりでなんだか妙に興奮していたのだった。

by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ

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