2005年04月18日

二階の窓から

小学校のころ、教室の窓からかえるのたまごを捨てたことがある。みんなで観察するために誰かが持ってきたのだろう、窓辺におかれた小さな水槽には、真ん中に黒い目玉をつけた透明なたまごがぎゅうぎゅうづめにされて浮かんでいた。

ある昼休み、何人かの男子が水槽を前に「こっから落としてみてーよなー」「あいつの頭めがけてたまごを投げつけてやりてぇ」などと言っている。二階の教室の窓からは、校庭で遊んでいる子たちが見えた。やりてぇよなぁ、おもしれーよなー、と声だけは威勢がいいけれど、実際に行動をおこす気配はまったくない。

なんだか知らないけれどむらむらとした衝動にかられ、わたしはさくっと水槽を持ち上げ、そのまま窓の外にぶちまけた。どぶどぶっと、たまごが流れ落ちていった。

ちょうど下には男の子が遊んでいて、その子の頭の上にまるで漫画のようにきれいにたっぷりとたまごがのっかった。どろどろのたまごを頭に、男の子はびーびーと泣き、教室にいた男子はぎゃあぎゃあと笑いころげ、わたしも少し笑った。そして男子は「オマエがやったんだからな、オレたちは知らないからなっ」と言い放って逃げていく。

つぎの時間、勉強している教室に、あわれかえるたまご男を連れて、その学級の先生がやってきた。「このようなことをしたのは誰か」と問う。はーい、わたしがやりました、と手をあげたけれど、直接の担任ではないせいかその先生は実に淡々とある意味では形式的に「この子に謝りなさい」と言ったので、ごめんなさいと頭を下げた。あやまりつつも、ちっとも悪いとは思っていなかった。

あのころ、大人に怒られるのはなにより怖いことだった。ましてやクラスのみんなの前で、先生に叱られるなどというのは屈辱的で、恥ずかしくて、とても恐ろしいことだった。なのに、かえるのたまご爆弾を落としたわたしはちっとも怖くも、恥ずかしくもなく、どこか清々した思いでいたものだ。

by ichiko : カテゴリー:日々のあれこれ

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